卒業後の進路

レコーディングスタジオ

レコーディング・エンジニアの役割とは?

CD、配信、有線放送など、いわゆる「ライブ」以外で我々が耳にする音楽は、基本的に「レコーディング」「ミックス・ダウン」という作業を経て作られている。「レコーディング」とは文字通り、作編曲家が作った楽曲を、プレイヤーが演奏して実際に録音していく作業だ。「ミックス・ダウン」とは、端的に言えば録音した各パートの音量や定位を調整し、楽曲全体のサウンドを整えていく作業である。この2つの重要な作業を行っているのがレコーディング・スタジオだ。

ひとくちにレコーディングといっても、そのプロジェクトごとに参加するミュージシャンや楽器編成、楽曲のジャンルは様々で、例えば「劇伴」と呼ばれるドラマや映画等のBGMの録音では、一度のレコーディングでオーケストラ編成を20曲~40曲録ることもあるが、CDとしてリリースされるアーティスト作品では一曲の録音に半日以上費やすこともある。

このように、多彩なレコーディングが日々行われている商用スタジオで、非常に重要な存在となるのが「レコーディング・エンジニア」であり、録音された楽曲(録音物)の良し悪しは彼らのウデで決まると言っても過言ではない。歌のレコーディングひとつ取っても、エンジニアは歌い手の声量・声質に合わせ、多種多様なマイクの中から一番適切なものをチョイスし、ベストな音質で録れるように角度や距離を計ってマイキングをする。そして、録音された歌声はミックス・ダウンにより、メロディーの良さを余すところなく聴かせる状態に整えられるのだ。彼らの持つ豊富な録音技術と、経験の累積から来る確かな「音に対するバランス感覚」に支えられ、音楽はまさに形になるのである。

レコーディング・エンジニアの仕事は、主にこの「レコーディング」と「ミックス・ダウン」のオペレーションだが、スタジオワーク全体をスムーズに進めるためのサポートなども大事な役目の一つである。演奏と譜面との細かな違いを指摘したり、作編曲家の意図を、言葉では伝えられない部分も含めて汲み取ったりと、作曲を学んだからこその音楽的能力が役立つことも多い。商用スタジオでは電気関係のエンジニアリングを学んだスタッフも多いなか、音楽大学出身という経歴が重宝されるケースもままあるのだ。

映画・放送音楽コースでは、レコーディング・エンジニアの仕事に直結する知識を学ぶことができるのはもちろん、企画から作曲、演奏、録音、ミックス・ダウンという音楽制作の基本的な流れを一気通貫で学ぶ。この全体を俯瞰することのできる知識や能力が、様々なプロフェッショナルが集う音楽制作の現場でも活きてくる。