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川村ケン×ソングライティングコース在校生座談会その3 授業で役に立ったことはどんなこと?

「川村ケン×ソングライティングコース在校生座談会」の第3弾は、前回に引き続き、日々の授業などについて在校生のみなさんにきいた。今回は特に授業で役に立ったことがらや、学校でのさまざまな経験、出会った人などに焦点をあてる。



――それでは、今度はもう少し授業の内容に踏み込んだお話を伺いたいと思います。

石川くん:曲作り、音色選び、打ち込みの仕方、アレンジングなど、すべてに言えることなんですけど、学校で教えてくださる先生方は、現役で活動されてる方ばかりなんです。ポップスは特に受け手主体の音楽ジャンルなので、お客さんの反応を肌で感じていらっしゃる先生方に直接教えていただけることはありがたいですね。

川村先生:なにか思い出深いエピソードとかはあるかな?

石川くん:はい。自分は、長くピアノの弾き語りをメインにやってきていまして、バンドではあまりやってこなかったんです。なので、バンド編成の曲にも、ピアノの弾き語りと同じような弾き方でピアノのバッキングを入れてしまったり、単体だときれいでも、全体の中では動きすぎるストリングスを入れてしまったりして、先生によく「ここも音が多すぎるね」とご指摘をいただきました。

川村先生:そうだね。それぞれ、すでにそれだけで成立している2つのオケをあわせちゃうようなものだからね。常に全体を俯瞰する、客観的な感覚を持って作業をすることはとても大切だね。

石川くん:それから、改めて色々なアーティストさんのアレンジを研究し始めまして、「充実しているのに、実はこんなに音が少ないのか」、「無駄な動きはホント効果的に聞こえていないんだな」などとずいぶん気づきました。ピアノひとつとっても、それぞれの楽器編成に対するアプローチの仕方に違いがあることを学びました。

冨田さん:わたしは大学に入って、きちんと打ち込みを覚えられたのが大きいです。高校生の頃は「打ち込み」というもの自体を知らなくて、自分なりにどうにかして曲を作っていたのですが、大学でこのツール学んでからは、これまでの時間はずいぶん無駄があったんだなぁ、と思いました。先生からは、Cubaseの使い方の初歩から応用、裏技的なことまで、教えてもらえます。今は、ある程度使いこなせるようになりましたので、「こんな曲書こうかな」と思ったらバーっと打ち込んで一気に作ります。とにかく、打ち込みを学べたことはとても大きいです!


フィードバック
いろいろな刺激を受けながら学んでいるという西川 愛さん(写真左)。

西川さん:わたしは、いろんな先生からのフィードバックを受けられるのが、うれしいですね。自分の殻に閉じこもらないでいられるのは大切だと思います。自分では「よし、完成した」と思っても、プロの耳で聞いていただくと、まだまだな場合もありますので。

川村先生:ほぼ毎月、課題の提出に合わせてですが、学生にも審査員になってもらっての楽曲の試聴会をやっています。これは、人の作品を職業的に聴く耳を育ててもらうことと同時に、自身の作品に関して「批評されること」のシミュレーションでもあります。ときに厳しい意見を受け止めつつも、必要以上にはへこまない、ということは、この先、重要になってきます。タフでなければ、この世界は生きていけませんから(笑)。

――なるほど。それでは、周囲の友達や先輩・後輩からの影響っていうのはありますか?

冨田さん:ライバルがいる、というのも刺激になっていますよ。わたしは負けず嫌いなので(笑)。

シャジャリさん:先日、授業の後で、ロビーでギターの練習をしていたとき、たまたま隣に座っていたインスト・コース(ポピュラーインストゥルメンツ・コース)先輩が、私のギターを弾いて見せてくれたんです。目の前で見た演奏が、すごい刺激になって「わたしもこういう風に弾けたらいいな」と、目標ができました。あんな風に、授業中以外でも何気なく音楽を教えてもらえる、3コースの親密さも、とてもいいところだと思います。


目標ができました
シャジャリ デララさんは、インスト科の先輩からギターを教わったことがあったそう。

川村先生:そうだよね。なんといっても、この建物の中には、先生も学生も含めて“ミュージシャン”しかいないんだからね。こんな特殊な環境はなかなかないよね。

沙魚川くん:僕は、ソング(ソングライティング・コース)の先輩に誘われて、アイリッシュ・ミュージックのコンサートに行ったのですが、ステージで演奏していたのが、映放(映画・放送音楽コース)出身の先輩だったんです。また、初めて生でティン・ホイッスル(※1)の音を聞いて、これには大きな影響を受けました。

柳澤さん:英語の授業で他のコース専攻の人と仲良くなれたのが印象深いです。そうすると、クラシック音楽の知識も入ってきたりして、面白いですね。「へえ。管楽器には“あわせ(※2)”っていうのがあるんだ」とか、そんなところに感動したりして。あとは、わたしは仮歌を頼まれることが多いんですが、先輩の曲から学ぶことはとても多いですね。知らなかったコード進行とか、わたしの中にはなかったメロディー・ライティングの方法とか、刺激になってます。もちろん、歌う経験も沢山積めるので、これも勉強になりますね。

川村先生:仮歌といえば、毎年、年度末にプロの仮歌師(※3)を呼んで、自作の曲を歌ってもらう、という実習をやっているよね。みんなは、この実習から、何か発見や気づきはありましたか?

石川くん:はい。いつもは自分が歌う曲を作っていますが、自分ではない誰かが歌うということを想定して作ること、それに、実際に他人に歌ってもらうことには、実は、最初はちょっと葛藤といいますか、戸惑いもありました。「こういう解釈で歌われることもあるのか」とか、作曲当初の自分の想像や思惑とのギャップを感じたりして。作曲者であると同時に、レコーディングでは、ボーカル・ディレクションもしなければいけないので、実習内の短時間で、仮歌師の方の歌い方のクセや特徴を読み取って、最終的に、しっかりと曲として成り立つように瞬時に判断していかなければいけないのは、慣れるまでは大変でした。

川村先生:作曲家というのは、シンガーソングライターとは違って、他人に歌ってもらうことが前提の仕事だよね。曲を提供したシンガーの個性はまさに百人百様だし、アイドルなどに提供する場合などを想定してもらうとわかると思うけど、必ずしも「歌手」=「歌が抜群に上手い人」ということではないですからね。そのあたりまで先読みして曲作りをすることも、ある意味、われわれの“職人”としての技の見せどころ、だといえると思うよ。

石川くん:まさにそうですね。「こういうつもりで作ったんだから、こう歌って欲しい」ばかりではなくて、色々な要素を全て咀嚼して、最終的に売り物として上手くまとめていくディレクション能力が必要ですよね。ましてや、歌手の方には、気持よく歌っていただかないと、本当にいい音楽にはならないですものね。色々と勉強になります。


打ち込みを覚えた
打ち込みを覚えて、作曲がスムーズになったという冨田 響さん(写真左)。

冨田さん:わたしは、かなり自分の絶対的な「こうしたい」っていうのが明確にある方なので、自分のビジョンと少しでもズレていると、最初はとても嫌だったんです。仮歌師の方に歌っていただいても、やっぱり解釈の違いというのがあって「ちがうなあ」と納得できないこともあったのですが、それが周りから「え? 今のいいじゃん!」なんて、思いもかけずに言われることがよくあって。そんな経験から、自分が、今まで必要以上に自分だけの世界に固執してしまっていた部分があることや、音楽って、聴く人によって印象や感想が随分違うっていうことを知りました。

川村先生:自分の音楽に対して、客観性を持って接する力を養ってもらうことも、この授業の目的なので、そういう経験を積んでくれていることは嬉しいですよ。また、プロに共通する判断基準っていうのがあってね、あるレベルに達している人なら、誰に話を聞いても意見が分かれないラインというのがあるんです。まさにこれを、これからみなさんに掴んでいってもらいたいところなので、頑張っていきましょう。このラインを体得した、いわゆる「プロ」のトビラの内側に入ってしまうとね、後から、今まで自分がいたところを振り返って「あれ? なんでこのテイク(※4)でOKしたんだろう?」とか「逆に、このときも最初のテイクが一番だったんだよなあ……気づかなかったなあ」とかって思えるようになると思います。そんな日が来るのを、みんな、楽しみに勉強していってね!



※1 ティン・ホイッスル:アイルランド発祥といわれる縦笛。もとはブリキ(Tin)で作られていたが、今では様々な素材で作られている。

※2 あわせ:個人個人で練習していた曲を、全員で実際に合わせて演奏してみること。

※3 仮歌師:楽曲のプレゼンテーションやプレビューのために作るデモ音源を録音するときに歌うプロシンガーのこと。

※4 テイク:一回の録音をテイクといい、1回めの録音は「テイク・ワン」、2回めなら「テイク・ツー」などというふうに使う。



座談会の参加メンバー

座談会参加者

写真左から、シャジャリ デララさん、沙魚川 勝紀くん、西川 愛さん、川村ケン先生、冨田 響さん、石川 晃士郎くん、柳澤 璃李子さん。